鶴見の四季の伝統行事で地域をつなぐ、みその公園「横溝屋敷」

江戸時代から変わらず鶴見に佇む、みその公園 横溝屋敷。旧家の屋敷跡でその屋号が御園(みその)であったことから、地名が付きました。昭和58年に横浜市により文化財として価値を見出され、平成元年11月には横浜市文化財保護条例に基づき文化財第1号に指定されて公開が実現しました。

建物については市民管理団体に託され、5棟ある茅葺屋根は公開前に平成30年の改修工事でリニューアル。江戸時代の農村の暮らしを体験できるさまざまな行事で人々が集い、今なお市民の憩いの場として利用されています。

主屋や穀倉など各建物内に多くの資料を展示

こちらは主屋、蚕小屋、穀蔵などのミニチュア模型の展示品です。展示室は主屋の2階にあり、江戸時代の歴史的な建造物や暮らしの詳細についても見地を広げることができます。
また、明和6年に作成された獅子が谷村地域の村絵図や村一帯のジオラマの展示もあり、当時の集落の様子が再現されています。

こちらは主屋の入口すぐのところにある土間です。これらの炊事道具はどれも現役で、試食会や七草がゆのふるまいなどのイベントでは実際に火を起こして調理に使用されるそうです。

参加者は、江戸時代の食事づくりの風景や古き良き農村の暮らしを垣間見ることができます。横溝屋敷では、親子や地域の方々が一緒に、普段体験できない貴重な機会を提供してくれます。

穀蔵にある鍬や鋤など稲作に使用する道具は、展示品として置かれているだけでなく実際に使えるものばかりだそう。そう話すのは、市民管理団体の新田事務局長。そのため、道具の日頃の手入れを入念におこなっているのだと教えてくれました。

米作りを親子で体験できる五郎兵衛稲作教室

横溝屋敷正面入口のすぐ脇に約500㎡ほどの田んぼがあります。4月から参加者を募集して、6月に田おこしや田植えを実施。10月には稲刈りや稲干し、そして脱穀の作業を体験できます。12月の収穫祭において米の収穫を祝います。

全6回にわたり一通りの稲作体験が可能なため、普段食べている米ができるまでの大変さを実感する貴重な機会ですね。毎年70名以上、多い年には90名もの参加者が集まる人気の行事だそうです。

新田事務局長に「年間を通して一番印象に残る行事は?」と伺うと、「12月のお餅つきですね」と教えてくれました。1年間の稲作体験で収穫した米を使い、参加者やスタッフと一緒に餅つきをおこなうそうです。自分たちが育てた米を味わえるとあって、感慨もひとしおですね。

四季折々の移ろいの中、屋敷内ではさまざまな行事が開催されます

横溝屋敷内には竹林があります。9月のお月見の日に合わせて、竹灯ろうまつりがおこなわれるそうです。竹筒を短く切った容器の中にLEDを灯し、現代版の竹灯ろうを作成。これを竹林の根元に散りばめて幻想的な風景を演出し、9月の夜長を美しく彩ります。

以前はろうそくの火を使用していましたが、近年はLEDライトに切り替えて安全性と環境に配慮した形で開催されています。

毎年恒例の行事に防災訓練があります。この文化施設自体が文化財であるため、万が一の火災から守る目的で実施されるのだそうです。

自衛消防団員や第8分団の消防団、駒岡と寺尾の消防署の方々も参加し、総勢約50名が集まる大規模な訓練。茅葺屋根に向けて放水を実施するなど、迫力ある行事の一つです。

3月にはひなまつりが開催されていました。最初は一組だったひな壇も、地域の方々から譲り受けるなどして、今では(令和7年2月現在)二十七組が主屋の1階から2階にかけて展示されています。
(展示期間:令和7年2月15日〜3月2日)

これらの人形や調度品の小物は、修繕が得意なスタッフの方が修理して大切に保管・展示しているそうです。近年はつるし雛の寄贈も増え、天井からつるして桃の節句を華やかに演出していました。

鶴見区みその公園 横溝屋敷では、お子さんだけでなく大人も温故知新に触れて楽しめる場所です。近年では仙台からのバスツアーが組まれるなど、遠方からの来館者も増えているそうです。

市民管理団体のみなさんは、鶴見の魅力や忘れてほしくない昔ながらの習慣を大切に保護・継承しています。これらの取り組みは、来館を楽しみにしている方々のために続けられているのです。

川崎鶴見臨港バスや横浜市営バスでのアクセスも便利な、みその公園 横溝屋敷へ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

みその公園 横溝屋敷
住所:神奈川県横浜市鶴見区獅子ケ谷3-10-2
アクセス:JR京浜東北線「鶴見駅」より川崎鶴見臨港バス 「表谷戸」下車 徒歩約5分または「神明社前」下車 徒歩約8分/JR横浜線「新横浜駅」より横浜市営バス 「表谷戸」下車 徒歩約5分)
TEL.:045-574-1987
営業時間:9:00~16:30(園内見学 10:00〜16:30)
定休日:第一、第三月曜(祝日の場合は翌日)、12/29〜1/3
駐車場の有無:5台あり(敷地横)

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。